一般社団法人 不動産協会

長期修繕計画の作成指針

長期修繕計画は、マンションの維持保全を図るために必要となる大規模修繕、設備交換工事等の項目、期間、金額等について取りまとめるものであり、対象とするマンションの戸数、仕様、計画期間等によって内容が異なる場合もあり得るので、同修繕計画の作成の便宜のため、汎用性のある長期修繕計画を以下に例示した。

分譲会社が、各マンションの具体の長期修繕計画を作成する際の指針としてこの長期修繕計画を活用することが望まれる。

1.適正な修繕積立金のあり方

(1)均等積立方式
長期修繕計画に基づき算出する修繕積立金額は、資材、数量等を勘案の上、該当する金額を代入して長期修繕計画に対応する期間(20年以上で妥当な期間とする。)の総額を算出し、その金額を同期間の月数で割り戻した金額を月額とする。計画期間中は均等額の修繕積立金となるため、経済的に可能であれば当初における設定として最も望ましい方式である。

(2)段階増額方式
均等積立方式と同様に総額を算出し、購入者の当初月額負担を軽減するため、一定期間(5年程度)ごとに段階的な増額を行い、最終的には必要となる総額と一致する方式である。増額の段階で管理組合の集会の決議等の手続きが必要となるため、管理規約等に増額の時期、金額等を付記しておくのが望ましい。

(3)一時金徴収方式
上記と同様に総額を算出し、積立金総額との不足額を明らかにするとともに、不足する金額が大規模修繕時に一時金等により徴収されることを購入者に予め明示する方式である。段階増額方式とは異なり、一時金徴収、増額等を管理組合に全て委ねることから、不確定要素の多い積立方式となる。

(4)上記3方式のいずれを採用する場合であっても、総額の算出に当たっては、当該計画の年数内に到来しない工事についても、工事年数から割り出した当該年数分の金額を見込んで積み立てる必要がある。

2.具体の長期修繕計画及び修繕積立金の算定

(1) 長期修繕計画は、工事項目、工事周期、工事単価、数量を代入して作成し、20年以上の期間で妥当と思われる年数(少なくとも外装工事2回分を含む年数)を代入して修繕積立金を算定する。

(2) 本計画は、引渡時点と同一程度の性能維持を前提とする。

(3) 本計画の修繕積立金額は新築時における算定であり、前記の通り、必ず一定時期(5年程度)ごとに見直すよう購入者に説明する必要がある。

(4) 管理状態によっては、不測の工事、実施時期の繰り上がり等が予想されるので、その場合には一時金等で対処する旨を購入者に説明する必要がある。

(5) 工事項目によっては毎年実施する工事もあると思われるので、それらについては当該計画から除外し、管理費等一般会計の取り扱いとすることも可能である。

(6) 本計画は、修繕積立金名目で徴収される金額を基にして作成されている。 従って、別途徴収する修繕積立基金(上記参照)及び毎月徴収される駐車場、専用庭、ルーフバルコニー等の使用料金額については、管理規約等に明記した上で、その全額または一部について修繕積立金額に算入することも可能である。

3.修繕工事項目について

修繕工事項目については、1.建築関係、2.設備関係、3.その他に分類し、それぞれを以下のように分類する。なお、項目については、大規模修繕として一般的に用いられるものを取り上げており、マンションによっては該当しないものあるいは不足しているものが考えられる。従って、このような項目についてはマンションの特性、実態に併せて作成する必要がある。

A.建築関係

(1) 仮設工事〔仮設足場費(外装)、その他仮設費〕
【仮設足場費(外装)】
外壁塗装に必要となるため、外壁塗装に併せた周期設定をしている。
【その他仮設費】
作業用の仮設小屋、誘導員の人件費等である。

(2) タイル〔外壁(タイル)張替、外壁(タイル)洗浄、外壁(タイル)部分補修(浮き部補修)、外壁(タイル)部分補修(張替)〕
【外壁(タイル)部分補修(浮き部補修)および外壁(タイル)部分補修(張替)】
外壁タイルの部分補修には、浮き部補修およびタイルの張替えの2つの方法がある。どちらの方法を採用するにしても、最初の大規模修繕では、全体面積の2割程度を見込む必要がある。従って、全体面積に単価を掛け、そのうちの2割の金額が当初の大規模修繕で必要な金額となる。

(3) 外壁塗装〔外壁(吹付)下地を含む、複層仕上塗材(吹付タイル)〕
【外壁(吹付)】
標準的な吹付塗装である吹付タイルについて設定した。これ以外の外壁塗装の場合は別途周期および単価を考慮する必要がある。

(4) 共用内壁〔共用内壁(吹付) 下地を含む、複層仕上塗材(吹付タイル)〕
【共用内壁(吹付)】
外壁塗装と同様標準的な吹付タイルを設定した。

(5) 共用天井〔共用天井(吹付) 下地を含む、外装薄塗材 (アクリルリシン)〕
【共用天井(吹付)】
標準的なアクリルリシン吹付で設定した。

(6) 鉄部塗装〔鉄部扉、機械式駐車場、フェンス、鉄骨階段(足場含む)〕
【鉄部扉】
パイプスペース、メータボックス、トランクルームの扉を指している。
【鉄骨階段】
鉄骨階段の足場は、大規模修繕と重複する場合には除外する必要がある。単位(m2)は塗装面積である。

(7) 防水〔屋上防水(露出) 張替 (撤去費含む)、屋上防水(露出) アスファルトかぶせ工法、屋上防水(歩行) 押えコンクリートかぶせ工法、屋根防水 張替(撤去を含む)、屋根防水 重張、バルコニー、ルーフバルコニー、開放廊下〕
【屋上防水】
屋上防水は露出型と歩行型に分けて設定した。 露出型は張替えとアスファルトかぶせ工法に分け、最初の大規模修繕では、アスファルトかぶせ工法を採用し、2回目の大規模修繕では張替を採用することとした。歩行型は押えコンクリートかぶせ工法を採用した。
【屋根防水】
屋根防水は、勾配のある切妻型等を想定した。張替と重張に分け、最初の大規模修繕では重張を採用し、2回目の大規模修繕では張替を採用することとした。材質はアスファルトシングルを使うのが標準的である。 ルーフバルコニー 歩行を前提とするため、複合塗膜防水を設定することを想定した。

(8) シーリング〔シーリング (幅20mm×厚さ10mm)打替え、シーリング打替え (15mm×10mm)、シーリング打替え (10mm×10mm)〕
【シーリング】
目地の幅に応じて単価を設定している。 重ねて張るダブルシーリングの場合は、2倍の単価設定となる。

(9) 外構関係〔駐輪場取替(屋根、ラック共)、フェンス取替(メッシュフェンス)、道路舗装(アスファルト)部分補修、道路舗装(インターロッキング)部分補修〕
【道路舗装(アスファルト) 部分補修、道路舗装(インターロッキング) 部分補修】
最初の大規模修繕では、全体面積の20%程度の部分補修を見込んで設定している。従って、全体面積に単価を掛け、そのうちの20%相当の金額が当初の大規模修繕で必要となる

B.設備関係

(1) 給水設備〔圧力式給水ポンプ取替、圧力式給水ポンプオーバーホール、受水槽取替、給水管取替、増圧ポンプ取替〕
ポンプ類のオーバーホールは取替の60%程度を見込んで算定している。

(2) 排水設備〔排水ポンプ取替、排水管取替〕

(3) ディスポーザー処理槽〔ポンプ・ファン類取替、ブロアーポンプ取替、制御盤取替、配管取替〕
【ディスポーザー処理槽】
ディスポーザーが設置されている場合は、この項目が必要となる。

(4) 電気設備〔分電盤類取替、照明器具取替、構内ネットワーク更新、共聴設備取替(アンテナ)、共聴設備取替 (その他の設備)、避雷設備取替〕
【構内ネットワーク更新】
インターネット、LAN等の構内ネットワークが設置されている場合は、この項目が必要となる。
【共聴設備取替 (その他の設備)】
アンテナ以外のブースター等の設備の取替えを指している。
本項目は、戸数で単価を設定している。

(5) 消防避難設備〔消火栓箱取替、補給水槽取替、消火ポンプ取替、自動火災報知器取替、住宅情報盤取替、避難ハッチ取替〕
【消火ポンプ取替】
屋上に設置された消火用の水槽がある場合は、この項目が必要である。
【住宅情報盤取替】
テレビモニター、制御装置などセキュリティのための中央コントロール設備の取替えを指している。

(6) EV設備〔エレベーター取替、エレベーター内装〕
【エレベーター取替、エレベーター内装】
超高層マンション等にあっては、メーカーに問合せのうえ設定する必要がある。

(7) その他〔集合郵便箱取替、宅配ロッカー取替、宅配ロッカー部品交換、機械式駐車場取替、機械式駐車場補修(パッキン、制御盤)〕
【宅配ロッカー部品交換】
制御部品の交換等を想定している。

C.その他

(1) 調査診断〔建物調査診断料、給排水管等調査診断料〕
【建物調査診断料】
外壁塗装、防水等の大規模修繕のための診断に要する費用であり、当該工事の前に行う必要がある。
【給排水管等調査診断料】
給排水管等の交換を行うための診断に要する費用であり、当該工事の前に行う必要がある。

(2) 排水設備〔排水ポンプ取替、排水管取替〕

(3) 調査診断〔建物調査診断料、給排水管等調査診断料〕
長期修繕計画〔長期修繕計画見直し費用〕

別表1:修繕工事項目・周期・単価表(PDF:14KB) PDF

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