一般社団法人 不動産協会

日本の不動産業

環境・エネルギー、防災、エリアマネジメント

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環境・エネルギー  防災  エリアマネジメント

    環境・エネルギー

  • 地球環境問題に関する政策の動向
  •  地球環境問題、特に気候変動関連への対応は、国際社会全体で取り組んでいく重要な課題です。日本は2020年、「2050年カーボンニュートラル」を宣言。その後、2021年には2030年における温室効果ガス排出量の削減目標の引上げと目指すべきエネルギーミックスが「エネルギー基本計画」、「地球温暖化対策計画」等の重要戦略において示されました。
     そうした中、2023年には、使用するエネルギーを太陽光発電等の再生可能エネルギー中心に転換する「GX」の実行に向けたロードマップが示され、産業・社会構造の転換と経済成長を目指す取組みへの要請がさらに高まっています。
     住宅・建築物の分野においては2030年・2050年におけるZEH・ZEB目標等が示されるとともに、再生可能エネルギーの活用拡大に向けた議論が加速しています。

  • 不動産業における課題と自主行動計画の策定
  •  不動産業として喫緊の課題となっているのが、エネルギー消費量の削減と、それに伴うCO2排出量の削減です。また、都市化に伴うヒートアイランド現象の緩和、緑化の推進、世界的潮流が強まる循環経済への移行、生物多様性の保全等についても、不動産の開発・運用を行う上での重要度が増しています。
     不動産協会では、2021年に、2050年における社会像を想定し、脱炭素社会実現に向けて不動産業が主体的に取り組む貢献手段や目指すべき方向性を整理した「不動産業における脱炭素社会実現に向けた長期ビジョン」を策定するとともに、2030年に向けた中期的な環境行動目標として2013年に策定した「不動産業環境実行計画」を全面的に改定しました。

  • サステナブルなまちづくりに向けて
  •  不動産業におけるサステナブルなまちづくりに向けて、ZEH・ZEBといった環境性能に優れた住宅・建築物への取組みを本格化する企業は増加傾向にあり、2030年に向けた市場へのさらなる普及・拡大が見込まれます。
     また、ESG投資(環境・社会・企業統治を重視した投資)やSDGs(持続可能な開発目標)といった、事業活動における環境負荷の軽減や持続可能性を重視する社会的要請はもはや一般化し、さらに高いレベルでの先導的な取組みや気候変動対策関連の積極的な情報開示が求められています。
     住宅・建築物の環境性能を評価・認証する制度としても、住宅性能表示制度やBELS、CASBEE等といった国内の制度に加え、SBTiやRE100をはじめとする国際的な認証へも対応する必要が出てきています。不動産事業者には、こうした制度・評価を積極的に活用するとともに、テナント事業者や住宅購入者に対して、住宅・建築物における環境性能の重要性・必要性を周知・浸透していくことも期待されています。

    防災

  • 都市の防災性能の向上
  •  日本の社会・経済機能を維持していく上で、大都市における防災性・事業継続性向上の取組みは極めて重要です。不動産業界はこれまでも、都市の防災性能を高めるため、都市再生やまちづくりに取り組んできました。発生すれば大きな被害を及ぼすと言われる首都直下型地震や南海トラフ地震、さらに近年頻発している台風やゲリラ豪雨等といった災害リスクへの対応は喫緊の課題であり、とりわけ、大都市では密集市街地の危険性も早急に解消する必要があり、対策が急務です。
     国際競争力強化の観点からも、東京の災害リスクは国際的に弱みとして評価されています。そのため海外企業にも安心して日本に進出してもらえるよう、防災機能の充実を図り、事業の継続性を確保するとともに、災害が発生しても一定の経済活動が継続できる災害に強いまちづくりを官民一体となって実現することが求められます。
     そのためには、都市再生事業の迅速・着実な推進を通じ、浸水対策、制振・免震構造や非常用発電設備等のBCP機能に加え、エリアの防災拠点として周辺の帰宅困難者や避難者を安全に受け入れられる高規格な建物の整備をさらに進めていく必要があります。また、こうしたハード面の整備と合わせ、減災のための共助体制の構築等ソフト面を充実させる取組みも欠かせません。

    エリアマネジメント

  • エリアマネジメントとは
  •  これまでのまちづくりでは、ハードやインフラの開発に焦点が置かれていましたが、一定のエリアにおいて民間が主体となって既存の住民・企業等の交流を促進したり、イベントなどを通じて賑わいを創出するなどといった「ソフト」に焦点を当てる「エリアマネジメント」の重要性が高まっています。その際、中心となる民間は、「エリアマネジメント団体」と呼ばれる組織で活動するケースが増えています。
     例えば、公共道路を使ったイベントの開催や、地域の賑わい拠点の整備等さまざまな取組みが見られ、地域への人口流入増加、集客増加による商業の活性化、地域のブランディングなどが見込まれます。災害の際にも、地域住民やワーカー同士の連携が図りやすくなる側面もあります。
     国土交通省でも、2019年以降、「居心地が良く歩きたくなるいまちなか」の形成を目指し、ウォーカブルなまちづくりを進めています。また、2020年には「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりの支援制度を策定し、同年に創設された「歩行者利便増進道路(ほこみち)」制度と連携した公共空間の利活用が期待されています。

  • 財源確保に向けた取組み

 エリアマネジメント活動の推進に際し、安定的な財源の確保が課題となっています。主体的に関わる民間企業や個人、団体等による持ち出しに頼る運営では、活動の継続性に懸念が残ります。特に、エリアマネジメント活動による利益を享受しつつも、活動に要する費用を負担しないフリーライダーの問題が生じているため、海外におけるBID(Business ImprovementDistrict)の取組事例等を参考とし、地区を指定して不動産所有者等に資金の負担を求め、その資金をエリアマネジメント団体等に配分する仕組みとして、日本でも2018年6月に改正施行された地域再生法によって「エリアマネジメント負担金制度」が導入されました。国土交通省でも、同年8月に「民間まちづくり活動の財源確保に向けた枠組みの工夫に関するガイドライン」を策定しています。